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もう一度見たくない名画
「真夜中のカーボーイ」
文 ブレイク屋西兵衛
中学生の頃(1974年から1976年頃)は、かなり映画にはまっていた。 週末になると名画座(古い映画を2本立て、3本立てで上映し、料金は300円程度)に通い、片っ端から映画を見続けた。
当時はパニック映画がヒットし、アメリカで「大作ブーム」が起こっていた。映画不況で予算をかけない地味な作品が多かった時代が終わり、久しぶりにハリウッドに活気が戻ってきていたが、中学生の私はその流れに逆行するように、60年代後半から70年代前半に作られたニューシネマという作品群を好きになっていった。
「イージーライダー」「卒業」「スケアクロウ」「俺たちに明日はない」「いちご白書」「バニシング・ポイント」・・・・。 若手監督、無名俳優を使って低予算、大規模なアクションシーンは無く、社会問題を鋭く突く題材、主人公は反体制派。そして思わせぶりなラスト・シーンが多かったように思う。クラスの人気を独占する美少女や明るくて輝きのある女の子には見向きもしないで、教室の隅で1人静かに座って読書している地味な女の子を好きになってしまったような話だ。
中でも最も気に入ったのは、ダンスティン・ホフマンとジョン・ボイドが主演した「真夜中のカーボーイ」だった。 テキサスの片田舎から「都会の金持ちマダムに体を売って大儲け」というウソ臭い話を真に受けて、ニューヨークに、のこのこと出てきてしまった若者(ジョン・ボイド)と、街の底辺でドブねずみのような生活をしている男(ダスティン・ホフマン)の奇妙な友情を描いた作品だ。
映画ファンのアンケート等では、アラン・ドロンやロバート・レッドフォード、ジャクリーン・ビセット(きれいだったなあ・・・)らが上位を占め、あのブルース・リーも、バリバリにリアル・タイムだった時代に、どういうわけか、映画通と呼ばれる連中には、この作品を熱烈に愛した者が多かった。
当時はビデオもDVDもなく、もう一度見たいと思ったらテレビ放映か、名画座に行くか、リバイバル上映を待つしかチャンスはなかったが、この作品がかけられる映画館は、ほとんどなかった。それでも、10回近くは見ているだろう。
何度見ても感動し、だからこそ、繰り返し見に行ったはずなのに、今思うと、何がそれ程よかったのか、あまり思い出せない。年をとっても、昔のことなら、よく覚えているはずだが、自分がどんな気持ち、感覚でこの映画を追いかけていたのか、ほとんど覚えていないのだ。 酒や女、銭儲けにうつつを抜かす日々を送っているうちに、青春の苦悩も、煌きも、すっかり消え失せてしまったのか。
ラストは確かにジーンとくるが、それはジョン・バリーの音楽がかなり影響しているし、ニルソンが歌う挿入歌「エブリバディ・トーキン」も忘れられない名曲だが、それに匹敵する内容が果たして映画にあったのかどうか・・・。
都会の片隅で、地を這うように生きている男たちの姿が、なんだか無性にカッコよく見えた(ような気もした)が、都会で定職にも就かず、ぶらぶらしていれば、いろいろ問題が起こるのは当然だろうと今なら思う。ラッツォ(ホフマン)の真似をして、びっこを引く練習なんかしていたのも、なんとも恥ずかしい思い出だ。
「これこそ名画中の名画、最高の傑作だ」 と肩に力を入れて、映画仲間たちと暑っ苦しく語り合った少年時代が懐かしいが、 「本当に、そんなにいい映画だったんですか?」 と若い人たちから問われれば、 「・・・なかなか、渋い映画だったような・・・」 と甚だ自信がない。何しろ、当時は左翼全盛の時代で、ベトナム戦争も終わったばかりだったし(「ベ平連」って知ってっか?)、連合赤軍やら、よど号事件やら、世相も暗かった。この映画にぴったりの「地味さ」が世の中にあったのだろう。
ダスティン・ホフマン主演作が「名作」と同意義語だった時代はとうに終わり、ジョン・ボイドは、「金になれば、仕事を選ばず」というポリシーに徹しているのか(偉い!)、パール・ハーバーで大統領役をやっていたかと思ったら、ジャングルでアナコンダに食べられてしまったり、もはや「何でもあり」の状態だ。
21世紀の今、50歳の自分が、もう一度見て、どんな感情が熾るか試してみたい気もするが、やめておいた方が賢明だろう。昔好きだった女が忘れられず、数十年ぶりに会いに行くことほど愚かなことはない。 この映画は自分にとって大切な作品であることは間違いないが、だからこそ、「再会」して、「しまった・・・」と後悔したくないのだ。 「もう一度見たくない名画」 それが、「真夜中のカーボーイ」だ。
最近の紅白歌合戦は凄いぞ! 文 ブレイク屋西兵衛
何年か前、衛星放送で友人たちと紅白歌合戦を見ていたら、知らない歌手ばかり登場してくるので、大荒れになってしまったことがあった。 whiteverry?akio?中村美津子?花花?伍代夏子?「おい、いいかげんにしろよ。オレたちを何だと思ってるんだ!知ってる奴を出さんかい(SMAPすら、知らなかった)!」
当時は「若者向けの1部」と「年寄り向け(?)の2部」に分けて製作されていたせいか、前半は、「これはいったい、どこの国の紅白さね」状態で、一緒に見ていた仲間たちの不満は爆発寸前だ。2時間以上経過して、ようやくビッグ&オールドネーム(失礼)の松田聖子が現れたときは、「おおおおお!!!!!!セイコだー!せいこだー!!聖子だあああああああ!!!!」全員で抱き合うように大喜びした。
私くらいの年(50歳)になってくると、「好き」とか「嫌い」よりも、「知ってる」「知らない」で評価するようになるから、聖子ちゃんのような同世代は実にありがたい。「2部制」は、プーケットに限らず、全世界的に不評(?)だったようで、すぐに元のスタイルに戻ったが、このときの落胆が大きかったせいか、その後、しばらくは、「紅白」を見ることはなかった。
ところが先日、友人からDVDを借りて、ここ7年間の全場面を見る機会があった。そして、大いに驚いた。しばらく見ていないうちに「紅白」は、劇的な進化を遂げていたのだ。 まず、一言で言えば、「豪華」。日本は、何事も「みみっちい」ことにかけては有名な国だが、「紅白」だけは違っていた。これほどの歌謡祭は世界的に見ても他にないだろう(NHKホールに「金かけすぎ」という愚かな批判も出そうだが、無視してちょうだい)。
特にセットが凄い!「ザ・ベストテン」「夜のヒットスタジオ」「ミュージックフェアー」・・・かつての民放人気歌謡番組は、すべてスタジオ制作で、本当に生放送だったかどうかも怪しいものだったが、それらを遥かに上回る大規模なセットを生のステージ上で次から次へと惜しげもなく、どんどん転換していく。まさにゴージャス!照明も凄い!セッティングだけで数日かかっているのは確実で、しかも、移動式のものも多く、本番中にアクシデントが起こったら万事休す、チーフの首が飛ぶのは確実だろう。
同じセットでも、照明の色と角度を変え、カメラ位置を移せば、まったく別の雰囲気になるから不思議だ。番組の構成は、基本的には「今ウケ」している人たち中心に流れていくが、「おじさん層」が飽き始める頃合を見計らうように、演歌を混ぜたり、昔懐かしい顔ぶれを呼んできたりと、なかなか考えた内容だと思う。
舞台の裏方をやったことがある人なら、誰しも驚嘆すると思うが、生放送4時間の間に40組以上の演者を登場させ、秒刻みのタイムテーブルに沿って舞台を回していくのは人間ワザではない。舞台裏では、製作スタッフたちの、もの凄い怒号が飛び交っていることだろう(最前列近くのお客さんには聞こえているはず!)中でも最大の見所は、出場者の「真剣勝負」感が見ているこちらにも、ひしひしと伝わってくることだ。生放送の一発勝負、出演者全員が気合入れまくりで、万全の準備を整え ベストの状態で挑んでくる「紅白」では、「実力の差」が誰の目にも明らかになり、関係者、特に歌っている本人たちが一番それを感じるだろうから、生半可な気持ちでは出てこれない。
一時期、「紅白」出場を拒否したり、辞退することが歌手の商品価値やステイタスのアップに繋がっていた時代もあったが、進化を遂げた今の「紅白」では、もはや、それは通用しないだろう。なんやかやと理由をつけて出場を断り続けている大物シンガーもいるが、要するに、「あの場所では、いかにも分が悪い」と悟っているんじゃないか。
もしも、自分の歌に絶対の自信があるのなら、「同じステージ、同じ条件」で「自分の実力を見せ付けてやろう」、きっと、そう思うはずだ。「本物のプロ」なら間違いなくそうだろう。最後に、過去7年間のハイライトシーンを2つ。
 一つは2007年のGackt「RETURNER~闇の終焉~消え逝く武士への鎮魂歌」。明らかに大河ドラマの宣伝を兼ねていたが、「ここまで、やっちゃうの?」と思えるほど凝っていて、実際のドラマより、「よっぽど制作費使ってるんじゃないか?」と疑いたくなるほどの大作だ。大河ドラマでの演技より、このステージのほうが100倍カッコよかったのは言うまでもないが、さすがにスタジオ収録だった。
そして、もう一つは、同じ2007年で大トリを務めた五木ひろし。それ以前の数年間、五木は、明らかに精彩を欠いていた。「扱い」も、森進一よりは上だが、明らかに北島サブちゃんやSMAPの風下に置かれており、一応、「大物扱い」はされているものの、それほど重要でもないポジションで、「淡々と出番をこなす」、そんな感じだった。
ところが、この年の五木には、鬼気迫るものを感じた。やはり、モチベーションは大切だ。東京ドームであろうが、場末のキャバレーであろうが、お客さんがいっぱい入って、ノリが良ければ、燃えるだろうし、逆なら、やる気もなくなる。日本のショービジネス界の最高峰「紅白」のしかも「大トリ」。一世一代の桧舞台に返り咲いて、「男、五木ひろしが日本列島一億人の夢と期待を背負って、今年の芸能界を締めくくらせて頂きます」はっきりと、顔にそう書いてあったのだ(ホントだぞ。ぜひ見てちょうだい)。
さあ、みなさん、今年もいよいよ「紅白の季節」がやってきた。大いに楽しもう! |